
相続放棄
2025/07/07NEWS / 税務関係
近年、相続税の申告件数が増える中で、相続放棄の選択も増加傾向にあります。直近の公表では、相続放棄の年間受理数は約28万件で過去最多を更新しました。過去5年間では約30%増加しています。(2023年司法統計データより)。今回は相続放棄について詳しくみていきます。
相続放棄とは
相続が開始した場合、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産を一切受け継がないことを選択する手続きです。相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれ、相続放棄をするとはじめから相続人ではなかったものとみなされます。相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。
相続放棄を選ぶケース
相続放棄の理由として、債務超過(マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合)が多いですが、遠方にある空き家や管理が難しい不動産の相続を避けるケースも増加しています。また、被相続人との関係が疎遠であり相続財産の状況が不明確な場合なども考えられます。
注意点
一部の財産だけを放棄することはできず、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになります。そのため事前に、被相続人の財産・債務状況を可能な限り調査することが重要です。
相続放棄をすると次の相続順位の相続人に相続権が移ります。放棄後に家庭裁判所から他の相続人に通知されることはないため、トラブル回避のためにも他の相続人に通知することが必要です。
手続き面では、家庭裁判所に申述書の提出が必要ですが、受理までの期間は預貯金や家財、不動産や借金などの一切の相続財産の受け取り又は処分ができません。手をつけてしまうと相続放棄ができなくなります。また、財産状況によって相続放棄後の債務処理に時間や費用がかかる場合があります。
税務上の留意点
生命保険金は民法上の相続財産ではないため、相続放棄後も受取人であれば受け取ることができます。ただし、相続税の課税対象になるため注意が必要です。
相続放棄を行う場合には、煩雑な手続きが必要なことや相続人間のトラブルを防ぐためにも、税理士や弁護士などの専門家に事前にご相談いただくことをおすすめいたします。