
デジタル遺産の重要性とその管理方法
2025/08/11税務関係
スマートフォンの普及とともに、私たちの生活は大きく変化してきました。金融機関やクレジットカード会社、さらには証券会社まで、多くの企業が専用のアプリを提供しており、スマートフォン一つで残高の確認、送金、利用履歴のチェックなどが瞬時にできる便利な時代になっています。紙の通帳も徐々に廃止されつつあり、通帳を発行する際には手数料が発生するケースも増え、金融業界全体として“通帳レス”が推奨されるようになっています。
しかし、このような利便性の裏には、デジタルデータへの過度な依存というリスクも潜んでいます。特に、スマートフォンを紛失した場合や所有者が突然亡くなった場合には、スマートフォンに保存されているアプリや情報にアクセスできないという事態が起こり得ます。これが「デジタル遺産」と呼ばれるもので、相続手続きにおいても非常に重要な要素になってきています。
実際、相続が発生した際に、故人の財産の全貌を把握するには、スマートフォンやパソコンに保存されたデジタル情報へのアクセスが鍵を握ります。銀行口座や証券口座、暗号資産、各種ポイント、サブスクリプション契約など、紙での記録が一切ないケースも増えており、これらの存在に気づかないまま相続税の申告期限を迎えると、後から修正が必要になることや、ペナルティとして追徴課税を受ける恐れもあります。
では、デジタル遺産に備えるためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
まず有効なのは、IDやパスワードを紙に記録して残しておくという、いわば「アナログ」な手段です。これが最も確実かつ家族にも伝わりやすい方法といえます。ただし、保管場所や情報の更新には注意が必要です。加えて、どの金融機関やサービスを利用しているか、家族にある程度情報共有しておくことも大切です。利用しているサービスが家族に伝わっていなければ、IDやパスワードが手元にあっても意味がありません。
また、現代では顔認証や指紋認証といった生体認証の普及により、パスワードを使用する機会が減っており、本人でさえパスワードを忘れてしまっているケースも少なくありません。このようなリスクを避けるためには、定期的にパスワードを入力する習慣をつけることや、パスワード管理アプリを活用することも検討すべきです。パスワード管理アプリは、複雑なパスワードを一元的に安全に保管でき、万が一の際には指定した家族に情報を共有できる機能を持つものもあります。
相続時に遺産が後から見つかると、遺産分割協議をやり直す必要が生じることがありますし、相続税の修正申告により余分な税金や延滞税が課されることもあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、今のうちから自身のデジタル遺産について整理し、家族と情報を共有しておくことが重要です。
人生の終わりを見据えて、自分の財産をきちんと整理するという行為は、家族への思いやりの一つともいえるでしょう。日常的に使っているスマートフォンの中にも、将来的に大きな意味を持つ資産が存在していることを意識し、適切な管理と備えを進めていきたいものです。