
家族信託の活用例~財産を「想い」とともに未来につなぐ方法~
2025/09/29NEWS / 税務関係
家族信託という言葉を聞いたことはありますか。家族信託とは、財産を信頼できるご親族に託し、目的や想いに沿って管理・運用してもらう仕組みです。これは単なる財産の管理ではなく、ご自身の「想い」を未来へつなぐための方法と言えます。
ここでは、家族信託がどのような場面で役立つのか、具体的な活用例を3つご紹介します。
もし認知症になり、判断能力を失ってしまうとどうなるでしょうか。認知症と判断されると銀行口座が凍結され、預金の引き出しや所有不動産の売却等、取引全般ができなくなるおそれがあります。家族信託を利用すれば、元気なうちに信頼できる人に財産を託しておくことでリスクを回避できます。
親子関係を例にすると、両親(委託者)が、子(受託者)に預貯金や不動産(信託財産)を信託することで、認知症になったあとも子が信託された財産をスムーズに活用することができます。両親へ生活費や医療費を支払うことができたり、不動産についての取引(売買、賃貸、修繕など)を行うことができ、安定した生活に備えられます。
死後、財産を「誰に」「どのように」引き継いでほしいか考えたことはありませんか。遺言書もひとつの方法ですが、遺言書では、死後の「一次相続」しか指定できません。しかし、家族信託では「二次相続」「三次相続」以降の承継先もあらかじめ指定することができます。
たとえば、信託契約で「私の死後は配偶者が財産を引き継ぎ、その配偶者の死後は子に引き継ぐ」といった形で、二世代にわたる承継の順番を指定することで、意思を長期的に反映させられます。また、配偶者が先に亡くなり後継ぎする子もいない場合には、相続で財産が姻族(配偶者の血族)に渡ってしまうのを防ぐことも、信託の設計次第では可能です。
3.事業承継:会社の経営権を円滑に引き継ぐ
経営者にとって、後継者へのスムーズな承継は大きな課題です。後継者ではないご親族にも、会社の利益を公平に分配したいと考える経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。家族信託を利用すれば、会社の「経営権」と「財産権」を分離して引き継ぐことができます。
例として、親である経営者(委託者)が、後継者となる子(受託者)に会社の株式を信託します。このとき、「議決権(経営権)」は子に渡しつつ、「配当を受け取る権利(財産権)」は別のご親族に残すことで、後継者に経営を任せながら、他のご親族にも公平に利益を分配でき、より柔軟に事業承継を進めることができます。
家族信託を検討する上での注意点
信託は、財産を柔軟で円滑に承継する方法として効果がありますが、一般的な相続税対策としての節税効果はありません。また、信託には専門的な知識が必要なため、安易に進めてしまうと思わぬトラブルにつながる可能性もあります。一度、弁護士、司法書士、税理士といった専門家にご相談されることをお勧めします。
信託は、大切な財産とそれにかける「想い」を未来につなぐための選択肢の一つです。ご自身の状況に合わせて、最適な方法を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社では信託を活用した事業承継のご提案をおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。