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給付付き税額控除の仕組みと導入課題について

2025/11/10NEWS / 税務関係

 今年10月に発足した新たな政権の主要政策のひとつに「給付付き税額控除」があります。これは、厳しい生活を強いられる所得層や社会保険料負担の特に重い子育て世代や現役世代への支援策として期待されています。しかし、諸外国で先行導入されているこの制度は、その仕組みが多様で、導入するには課題もあります。
 今回は基本的な仕組みと、日本が直面する課題についてみていきます

 

1.給付付き税額控除とは
 給付付き税額控除は、税制の仕組みを活用して給付を行う制度です。この制度の特徴は、「税額控除」と「給付」の仕組みにあります。

   税額控除:所得税などの税額から一定額を控除
   給 付:控除額が、本来納めるべき税額よりも大きい場合、控除しきれない差額分を現金給付

 「控除しきれない分を給付する」仕組みにより、所得税を納める必要のない所得者に対しても、確実な支援が可能となります。また、勤労を前提とした所得に応じて給付額が変動する仕組みをとれば、働けるのに働かないという問題を解消したり、社会保障負担の軽減や、消費税など逆進性のある税負担を緩和する効果もあります。

 

  1. 2.諸外国の対応

 給付付き税額控除は、欧米を中心に広く採用されていますが、国や制度によって対象者や、給付の仕組みが異なります。

 国民全員が確定申告を前提とするアメリカやカナダは、税額から控除し、残額を給付する仕組みを基本としています。イギリスやフランスでも、当初同様の仕組みを導入しましたが、運用の煩雑さから全額給付に移行した背景があります。またアメリカやイギリスのように対象を現役世代に限定し、勤労所得の増減に伴って給付額を調整する国もあります。

 

3.導入課題
 給付付き税額控除はより理想的な政策のひとつとされていますが、導入・運用には、次のような課題があります。 

① 執行基盤の未整備
  課税最低限を下回る人への給付について、確実かつ迅速な情報確認の基盤整備

② 不正受給の防止
  給付対象者を厳密化するため、所得の過少申告などによる不正受給者への対応

③ 資産性所得の把握
  資産要件を設定した場合に分離課税となっている利子配当、譲渡所得が生じる金融資産等の国内   
  外の把握

 これらの課題を克服するためには、組織体制の整備と、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)を最大限に活用することが不可欠で、行政コスト等の負担が避けられません。

 給付付き税額控除は、社会の不平等を是正し、皆が働くことを支援する制度といえます。
しかしその実現には、目的を明確化した制度設計が求められ、今後の展開にも注目です。